研究・技術情報
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公開日:2018年4月
蒸着アルミニウム顔料の特徴と水性化
はじめに
アルミニウム顔料はメタリック調の意匠を得る為に欠かせない材料であり、自動車用塗料、プラスチック用塗料、印刷インキなどの分野を中心に広く使用されている。アルミニウム顔料の意匠に及ぼす特性としては明度、陰影感、粒子感、鮮映性などが挙げられる。
従来のアルミニウム顔料はガスアトマイズ法などにより得られた粒度分布を持ったアルミニウム粉末を、ボールミルなどによりアルミニウム粒子を鱗片形状に変形させたもので、これらを塗料中に分散させることによって、シルバーメタリック調の光沢感を有する意匠を得ていた。
近年のお客様の高意匠のニーズにお応えする為に、弊社ではアルミニウム顔料の粒度分布や鱗片状のアルミニウム粒子(以下、単に「アルミニウム粒子」という。 )の厚みを均一に揃え、アルミニウム粒子のエッジ部分を綺麗に加工したシルバーダラータイプの高輝性アルミニウム顔料を開発している1)。
一方、蒸着アルミニウム顔料はシルバーダラータイプのアルミニウム顔料でも達成できない鏡面調を有する意匠であり、最近になって注目されている。 特に自動車分野においては、蒸着アルミニウム顔料を使いこなす為の塗料や塗装技術の開発が行われている2)。
しかしながら蒸着アルミニウム顔料は、塗料中への分散性の悪さ、塗膜中でのアルミニウム粒子の配向の難しさ及び水性塗料中での顔料の不安定さが問題となり実用面では未だ発展途上の状態である。
本報では蒸着アルミニウム顔料の特徴について述べると共に、最近弊社で開発した水性塗料用の蒸着アルミニウム顔料について紹介する。
蒸着アルミニウム顔料の特徴
蒸着アルミニウム顔料は、次のようにして得られる。 まず、シートであるプラスチックフィルム上にアルミニウムを均一に蒸着させる。 そしてこの蒸着されたアルミニウム薄膜とプラスチックフィルムを剥離する。その後、アルミニウム薄膜だけを破砕・粒度調整する事により得られる顔料である。
その特徴としては、厚みが均一でかつ非常に薄いアルミニウム粒子であり、その厚さはグレードにより異なるが概ね30nm以下のものが主流となっている。 この様な非常に薄いアルミニウム粒子で構成される蒸着アルミニウム顔料を塗膜中で凹凸なく配向させる事で図1 のような鏡面調の意匠を得る事ができる。

なお、図1 は弊社の2種の蒸着アルミニウム顔料TOYALSHINETOYALSHINE® を用いて得たものであり、現在TS-710PM及びTS-408PMをラインナップしをラインナップしている。 図 1 に示す写真の様に TS-408PM の方が黒み光沢を有しているのは、TS-710PM よりアルミニウム粒子の厚みが薄い為である。
図2は塗膜の断面のアルミニウム粒子の配列の様子を模式的に示したものである。このモデルに示す様に蒸着アルミニウム顔料のアルミニウム粒子の厚みが薄いため、塗膜の厚みも薄くできることから、塗膜中のアルミニウム粒子は一方向に均一に配向し、顔料同士が重なった部分の段差が極端に少なくなる。その効果として、塗膜があたかも一枚の平滑な金属膜のように振る舞い、乱反射が最小限に抑えられ、結果として鏡面調の意匠が得られる。

左:一般的なアルミ顔料の塗膜断面
右:高度に配向した蒸着アルミ顔料の塗膜断面
水性蒸着アルミニウム顔料
アルミニウム顔料は両性金属のため、水性塗料や水性インキ中では、フォーミュレーション中に含まれる、酸、アルカリ、水と反応し水素を発生しながらアルミニウムは腐食されてしまう。この様な反応が起こると、水素ガス発生とともに意匠が著しく劣化する。これまで弊社では、水性塗料に対応するための技術としてアルミニウム顔料のアルミニウム粒子上にシリカ皮膜をゾル・ゲルプロセスによりコーティングした EMERAL® シリーズを開発した 3)。
EMERAL® シリーズは主にシルバーダラータイプのアルミニウム顔料のアルミニウム粒子の表面にシリカ皮膜を形成した製品であるが、この度、蒸着アルミニウム顔料のアルミニウム粒子の表面にシリカコートを施した EMERALSHINE® シリーズを開発した。蒸着により得られたアルミニウム粒子は前述の通り非常に薄いため、一般的なアルミニウム顔料よりも比表面積が格段に高くなり、耐水性を確保するために必要なシリカ膜厚を付与する事が非常に困難であった。今回、シリカコートプロセスを大幅に改良する事により、非常に平滑で均一なコーティング層が得られる技術の開発に成功した。

図3は、改良プロセスによる蒸着アルミニウム顔料のアルミニウム粒子の断面のTEM像及びその元素分析マッピングである。アルミニウム粒子の表面上に薄くて均一なシリカ皮膜がコーティングされていることが分かる。
図4は、シリカコート蒸着アルミニウム顔料EMRS-D710 の耐水性を評価した結果を示す。
ガス発生試験の条件は次のとおりである。イオン交換水 45g、ブチルセロソルブ 45g の混合液中に蒸着アルミニウム顔料を固形分として 11.5g 分散させ、2-ジメチルアミノエタノールを用いてpH10.5 に調整した試験液 200g※を 40℃に保ち、発生した水素ガスをテスト日数ごとに時系列で計測した(※本顔料は不揮発分が 10%の為、試験液200g を確保する事ができる。)。
図 4 に示すとおり、シリカコートにより蒸着アルミニウム顔料の耐水性は飛躍的に向上した。これにより、水性フォーミュレーション中での蒸着アルミニウム顔料の耐水性が大幅に向上することが期待される。

おわりに
今回、蒸着アルミニウム顔料の特徴と水性塗料に対応するための最新技術について紹介した。蒸着アルミニウム顔料を用いて鏡面調の意匠を達成する為には、塗装コーティング膜中でのアルミニウム顔料の配向性を向上させる事が必須となる。これは顔料側からのアプローチだけではなく、お客様での使いこなす技術との両輪で成り立つ。
今後もお客様と一体となった取り組みを加速させ、新たな意匠の実現を目指す。
参考文献
1) 長野圭太;2015 年冬 東洋アルミニウム 技報
2) 藤原真一;表面技術, 67, 242, (2016)
3) 橋詰良樹; 2012 年冬東洋アルミニウム 技報
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