東洋アルミの
イノベーション

Innovation

“黒”なのに、熱をためない。
常識を覆すメタリックブラックの誕生

~意匠と機能を高度に兼ね備えた
「着色アルミ顔料(黒)」~​

「黒」という色には、特別なこだわりを持つ人が多い。深みや質感、光の見え方など、わずかな違いで印象が大きく変わる色だからだ。その一方で、「もっと深い黒にしたい。でも、光沢や輝きは失いたくない」という難しい課題もあった。東洋アルミニウムは、そんな相反する要素を両立させる新しい黒の表現に挑んでいた。開発を進める中で、もう一つのテーマとして浮かび上がったのが、“熱を持ちにくい黒”だった。これまで別々に考えられてきたデザイン性と機能性が、アルミという素材を通じて結びついていく。美しさと機能をあわせ持つ“黒”は、どのように生まれたのか。その開発の背景を追った。

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黒は進化できるのか?
見た目と機能のジレンマ​

自動車塗装の世界で、黒は白と並ぶ代表的な色であり、特に繊細な制御が求められる色でもある。しかし長年、黒には解決の難しい課題があった。「メタリック化すると赤味や黄味が混ざり、理想の漆黒から離れてしまう」「高級感を出そうとすると、かえって色が不安定になる」という問題だ。
さらに、もう一つの課題が“熱”だった。「一般的な塗料であるカーボンブラックを使った黒は、太陽光を強く吸収するため、塗装面や車内温度を上昇させてしまいます」。本プロジェクト責任者のSさんも、見た目の美しさと引き換えに、機能面で制約が大きくなるという問題を理解していた。 これはアルミ顔料でも同じだった。光輝感を強めれば金属感は際立つが、黒の深みは薄れる。逆に黒を強めれば、金属特有の“動きのある輝き”が失われてしまう。「黒」「輝き」「機能性」。両立が難しい三つの要素を、どう成立させるか。開発は、その課題に向き合うところから始まった。東洋アルミニウムが長年培ってきた顔料技術をベースにしながらも、新しい挑戦だった。

黒は進化できるのか?見た目と機能のジレンマ

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“黒は熱を持つ”を変えたい。
遮熱研究との出会い

一方で、アルミ顔料に詳しいSさんには、理想の黒に近づける手応えがあった。「カーボンではなく、ペリレンという物質を使えば、それほど難しくないと考えていました」。その考えは正しかった。転機は初回試作の色調評価で訪れる。塗板を見た開発メンバーの間に驚きが広がった。「これまでとは違う黒でした」。
しかし、やはり課題は「遮熱」だった。濃色塗装は太陽光を吸収しやすく、車両では車内温度の上昇やエアコン負荷の増大につながる。環境対応や省エネルギーが求められる中、この問題は無視できなかった。
そこでSさんが声をかけたのが、同じ開発チームのKさんだった。Kさんは入社以来、アルミ顔料の赤外反射特性や、遮熱用途への応用研究を続けてきた。「アルミ顔料は、もともと光反射性に優れています。ただ、それが“黒色設計”につながるとは思っていませんでした」。Kさんは驚きながらも開発への参加を決めた。意匠開発と機能研究が、本格的に結びついた瞬間だった。

“黒は熱を持つ”を変えたい。遮熱研究との出会い

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黒くすると光らない。技術的な壁との格闘

理論上の方向性が見えても、実現は簡単ではなかった。最大の壁は、アルミ顔料特有の構造で「黒色顔料を強くするほど、アルミフレークに届く光が遮られ、反射そのものが弱くなります」。つまり、「黒を深くするほど光らない」という根本的なトレードオフがあったのだ。
さらに実験を進める中で、別の課題も見えてきた。顔料の分散ムラによる色ブレ、表面処理のわずかな差による光沢変化、そして紫外線による退色だ。特に着色アルミは、入射光と反射光の両方が顔料層を通過するため、一般的な塗料より環境の影響を受けやすい。
現場では試験と検証が繰り返された。照射実験は条件を変えながら何度も行われ、既存設備だけでは足りず、Kさんは試験機を自作した。「試作顔料にライトを当て続けました」。
さらに生産ラインでも不具合が発生し、そのたびに製造現場と開発チームが調整を重ねた。「机上では成立しても、現場では通用しない」。そうした現実に直面しながらも、一つずつ精度を高めていった。

黒くすると光らない。技術的な壁との格闘

04/05

初回試作で見えた可能性。光と熱の両立へ

解析を進めた結果、赤外領域の反射率が従来のアルミペーストと同等レベルを維持していることが確認された。つまり、深い黒色でありながら、メタリックな輝きと遮熱機能を両立していたのだ。
この結果は偶然ではなかった。長年蓄積してきた着色アルミの設計ノウハウと、遮熱用途としてのアルミペースト研究。その二つが組み合わさることで実現した成果だった。
その後、この技術は学会でも発表され、外部研究者からも関心を集めることになる。「黒なのに熱を持たない」という特徴が、技術的な裏付けとともに評価され始めた。

初回試作で見えた可能性。光と熱の両立へ

05/05

“黒”のその先へ。
機能と表現が融合する未来

この開発が示したのは、新しい色の実現だけではない。「色は見た目のためのもの」「機能は別領域のもの」という従来の考え方に対する、新しい提案でもあった。
今回の着色アルミ(黒)は、漆黒の深み、メタリックな輝き、そして遮熱機能を同時に実現している。これにより、デザインと機能性を別々に考える従来の発想から、両方を一体で設計する方向へと進み始めた。今後はさらなる色相展開に加え、別の機能との組み合わせも視野に入っている。自動車用途だけでなく、建材や工業製品、さらには布素材への展開も検討されている。
美しさと機能を分けずに考える。この発想は、単なる素材開発にとどまらず、「色」のあり方そのものを広げる試みともいえる。異なる研究分野の組み合わせから生まれたこの技術は、今後の塗料設計に新しい方向性を与えていくはずだ。

“黒”のその先へ。機能と表現が融合する未来

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