東洋アルミの
イノベーション
Innovation
見えない接合を
確実にする「ろう材」。
“不良を出さない”を追い続けた挑戦
~必要な分だけを塗布できる
「トーヤルハイパーブレイズ」~
金属同士をつなぐ「接合」は、製品の品質を左右する極めて重要な工程だ。しかしその多くは、炉の中で行われ、目で確認することができない“見えない技術”でもある。東洋アルミニウムが開発したペースト状ろう材「トーヤルハイパーブレイズ」は、必要な場所に、必要な量だけを正確に供給することで、接合品質の安定化を実現した。その裏側には、「外観が悪い」という過去製品のイメージ、顧客ニーズの理解不足、そして数え切れない試作と失敗があった。“不良を出さない魔法のペースト”と呼ばれるまでに進化した技術は、どのようにして生まれたのか。見えない品質に挑み続けた開発の軌跡を追う。
01/05
見えないところで支える「接合技術」
カーエアコンや業務用エアコン、自動車のエンジン部品。私たちの身の回りにある多くの製品は、内部で金属同士が精密に接合されることで成り立っている。その要となるのが「ろう付」という技術だ。母材を溶かさず、ろう材を溶かして接合するこの方法は、強度と精度を両立できる反面、プロセスの管理が難しい。「トーヤルハイパーブレイズ」は、アルミニウム合金粉末をベースとしたペースト状のろう材。アルミろう付主流のブレイジングシート(板材)と異なり、必要な場所に必要な量だけを塗布できる点が最大の特長だ。「ピンポイントで供給できるので、無駄が出にくく、品質も安定します」と、長年滋賀の工場でろう材の開発に携わってきたMさんは説明する。この特性により、接合品質のばらつきを抑え、材料ロスを減らし、さらには工程の自動化にもつながる。目に見えない接合工程を、より確実なものへと変えていく材料なのだ。
02/05
「使ってもらえない」から始まった開発
しかし、その開発のスタートは決して順調ではなかった。もともと工場はアルミニウム粉末の製造が主流であり、ペーストろう材という形態そのものが未知の領域だった。「正直に言えば、最初は何を求められているのかすら分かりませんでした」とMさんは振り返る。さらに従来のペーストろう材には、「ろう付後の外観が汚い」という評価がついて回っていた。そのイメージが強く、顧客からは検討対象にすら入らないことも多かったという。
「技術的な相談を受けても、その背景にある課題や現場の制約を十分に理解できていなかった」。そこでチームは方針を転換する。まずは顧客を知ること。現場に足を運び、ろう付の条件や評価方法を一から学び直すことから始めた。「技術をつくる前に、使われ方を理解する必要がありました」。その積み重ねが、開発の土台となっていった。
03/05
見えない工程と、数え切れない試作を経て
ろう付工程の難しさは、その“見えなさ”にある。温度、時間、雰囲気、それらすべてが複雑に絡み合いながら進行するが、炉の中を直接確認することはできない。結果を見て、原因を推測し、条件を調整する。その繰り返しだ。開発チームは、顧客へのヒアリングや工場見学、業界団体への参加などを通じて情報を集め、自社でも炉を導入して検証を重ねた。「試作は数え切れないくらいやりました。100回や200回では足りないですね」とMさんは苦笑する。中でも大きな壁となったのが、バインダの設計だった。単体では問題のない材料でも、組み合わせると性能が出ない。ろう材が垂れ、外観が悪化する。そうした問題に何度も直面しながら、最適な配合を探り続けた。見えない工程に対して、地道に仮説と検証を積み重ねていく。その作業は、終わりの見えない挑戦でもあった。
04/05
常識を覆した3代目のブレイクスルー
転機は、顧客である楽器メーカーとの共同検証の中で訪れた。当時、ペーストろう材においては「フラックス(金属の溶接やはんだ付の際に使用される薬品・補助剤)は多いほど良い」という考え方が一般的だった。しかし開発チームは、その常識に疑問を持つ。「本当にそうなのか、一度極端に振ってみようと考えたんです」とMさんは語る。あえてフラックスの比率を大きく下げた試作品を提案。その結果は、合格だった。むしろ外観や接合状態は改善され、従来の課題を一気に解消する可能性が見えた。3代目の試作でたどり着いたその配合は、開発の方向性を決定づけるものとなる。「あのとき、“これでいける”という感覚が初めてありました」。この成果は初採用につながり、現在でも長く使われ続けている。常識を疑い、あえて外す。その一歩が、大きなブレイクスルーを生んだ。
05/05
さらなる高度化をめざして
こうして完成したトーヤルハイパーブレイズは、現場に確かな変化をもたらした。ろう付不良の大幅な低減、新しい設計の実現、量産時の品質安定――。その効果は多方面に及ぶ。現場では「不良を出さない魔法のペースト」と評価されるまでになったという。「もちろん魔法ではないですが、それに近いレベルまで来たとは思います」とMさんは静かに語る。とはいえ、開発はここで終わりではない。EV化や製品の高機能化が進む中で、接合技術に求められる性能はさらに高まっていく。より複雑な形状、より厳しい条件への対応と、課題は尽きない。用途や形態にとらわれず、最適な接合を実現する材料へ。その進化は、これからも続いていく。見えない品質を支える挑戦は、いまも炉の中で静かに進んでいる。
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ペーストろう材「トーヤル ハイパー ブレイズ®」
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